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2008年03月15日

【ユーザー・エクスペリエンス】「おもてなしの経営学 アップルがソニーを超えた理由」中島 聡




【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ブログ、"Life is beautiful"でお馴染みの、中島 聡さんのご本。

すでに、小飼 弾さんが記事になさっているので、お求めになられた方も多いかもしれません。

・・・てか、エントリ上に著者ご本人(と、先日対談された海部美知さん)が降臨されてるんですが(笑)。

日頃、名無しコメントが付きがちな小飼さんのブログも、さすがに大御所が揃い踏むと誰も書けませんね(汗)。


◆さて、タイトルにもある「おもてなし」

これは、中島さんがブログ上で、"User Experience"の適切な日本語を募集したところ、「『おもてなし』だと思います」というコメントがあり、その言葉を中島さんご自身が気に入られたことに端を発しています。

しかも、この「おもてなし」、何と「はてなダイヤリー」に登録され、『現代用語の基礎知識』に収録されたのだとか。

本書では、アップルとソニーの明暗を分けたという、「おもてなしの秘密」に迫ります!


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【目次】

第1章 おもてなしの経営学
・『現代用語の基礎知識』に収録された「おもてなし」
・ユーザー・インターフェイスとユーザー・エクスペリエンスの違い
・なぜグーグルはYouTubeを買収しなければならなかったのか? ほか

第2章 ITビジネス蘊蓄(うんちく)
・マイコン少年から経営者へ。『月刊アスキー』と私の「縁」
・ダブル・メジャー
・たった1ページの仕様書から始まったウィンドウズ95 ほか

第3章 特別対談
PartI 西村博之 ニコニコ動画と2ちゃんねるのビジネス哲学
・ひろゆきへの見方が一変する!? 『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか』
・ウィンドウズを使い続けると遅くなるのは私の責任!?
・グーグルの存在はマイクロソフトにとって脅威ではない? ほか

PartII 古川 享 私たちがマイクロソフトを辞めた本当の理由
・タコ部屋の突貫作業でPC-8001のゲームブックを作成
・あのジョブズも度肝を抜かれた? CANDY開発エピソード
・20数年越しで明かされるフロッピーディスクユニットのコード裏話 ほか

PartIII 梅田望夫 「ギーク」「スーツ」の成功方程式
・ギーク・スーツの中間層が存在しない日本のソフトウェア産業
・恐怖の中でビジネスをたたき込まれる200人のゲイツ・クローン
・エンジニアとしての実力がものを言う弱肉強食の世界 ほか


注:全部の小見出しの載っている目次がアマゾンにアップされています。


【ポイント】

■「ユーザー・インターフェイス」と「ユーザー・エクスペリエンス」の違い

●ユーザー・インターフェイス

⇒パソコンで言えば、ディスプレイのサイズアイコンのデザイン等、人間(ユーザー)がパソコンを操作するときに触れる(=インターフェイスする)ときの個別の部品

⇒ディズニーランドにおけるジェットコースター、スタバにおけるラテなども同様


●ユーザー・エクスペリエンス

⇒パソコンで言えば、「パソコンを持つことによって、その人のライフスタイルがどう変わったか」というレベルの話まで含めた総合的な話

⇒ディズニーランドにおける「入った瞬間から始まる、"別世界"」や、スタバにおける「店に入った途端に感じる"コーヒーの香り"や"店舗デザイン"を含む"場"」など


■マイクロソフトとアップルのどこが違うか

「アップル・ニュートン」のチーフアーキテクスト、スティーブ・キャップスの言葉

「マイクロソフトのプロダクツにはソウル(魂)がない」

⇒マイクロソフトにとって、「優れたものを作る」のは、それ自体が目的ではなく、「市場で勝つ」ための手段

⇒アップルの製品には「ユーザーにこんなものを使ってもらいたい」「ユーザーを驚かせたい」といったピュアなものづくりの姿勢がにじみ出ており、それが人々の心を打ち、熱烈なファンにしてしまう


■「こだわり」と「企業利益」

⇒消費者向けの製品でビジネスをする限り、勝負はいかに「製造コスト」「ユーザーにとっての価値」の開きを大きくするか、にかかっている

⇒エンジニアの自己満足のためのコスト増は、ユーザーにとっての価値を一切増やさないので利益率を圧縮する

⇒逆に「ユーザーにとっての価値」をそのコスト以上に増やす「こだわり」企業の利益を増やす

⇒アップルが利益を出し続けることができる理由の一つが、「ユーザーにとっての価値」を増やす細かな「こだわり」の積み重ねによる完成度の高い商品づくりにあるのでは?


■マイクロソフトとビルゲイツ

⇒米国のマイクロソフト社には、日本にごく少数しかいない「ビジネスのことがわかる技術者」「ITのことがわかる経営者」がたくさんいる

⇒ビル・ゲイツの考えは「ベンチャーのように小さなプロジェクトをいくつも立ち上げるのではなく、大企業はその膨大な資金・人的リソースを最大限に活用して、小さな企業が真似したくても真似できないような大プロジェクトに取り組むべき」というもの

⇒対談における古川 享氏の発言より

 確かにビル・ゲイツの決断力はすごい。どんなに膨大なリソースを投入していても、間違いに気づいたら即座にストップしちゃう。採択を迫られたときに迷わない。相手の言っていることのほうが正しいと認めさせるまでにビル・ゲイツを説得するのはたいへんなエネルギーがいるけお、認めたとたんに「俺が悪かった」と皆の前で言うからね。


梅田望夫氏との対談における中島氏の発言より

 マイクロソフトの全盛期には、その200人のエンジニア全員がビル・ゲイツと同じような考え方をしていて「ゲイツ・クローン」と呼ばれていた。事実、すぐその場でビル・ゲイツと同じ発想ができなければそのグループには入れなかったですから。だからこそ、あの会社は本当にすごかった。


■中島聡氏の「武勇伝」

⇒中島氏が大学時代に作ったCADソフト「CANDY」を、若かりし頃のスティーブ・ジョブズがアスキーを訪問した際に目にして、顔が硬直

⇒その「CANDY」の印税でマンション1つと別荘1つを購入(笑)

⇒グラフィック画面の塗りつぶしのアルゴリズムについて、ビル・ゲイツの手法を論破し、ゲイツ、カリカリ

⇒マイクロソフト社内における次世代OSの競合プレゼンテーションで、ビル・ゲイツの前で「ウィンドウズ95」のデモを行い、ゲイツがその場で相手グループを取り潰し

⇒ウィンドウズ98の目玉であった「シェルとブラウザの統合」は中島さんの手によるもの

⇒Googleからはバリバリに誘われた


【感想】

◆上記記事で小飼さんが書いているように、本書は、中島さんのブログの記事を元にした第1章と、「月刊アスキー」での連載記事をまとめた第2章、さらに、その「月刊アスキー」に一部掲載された特別対談である第3章から構成されており、月刊アスキーを創刊時から欠かさず購読している私にとっては、既読の内容が結構多かったわけです。

それなのに、本になっても同じ部分を何度も読み返してしまう摩訶不思議(笑)。

読み始める前は、速攻読み終わるかと思ったんですが、牛でもないのに勝手に反芻しちゃいましたよ。←アフォ


◆その理由の一つが、中島さんの「武勇伝」(笑)。

天下のゲイツジョブズ真っ向から張り合えたり、Googleにバリバリ誘われた日本人が存在する、という事自体が痛快じゃないですか(笑)。

上記で挙げた、「ウィンドウズ95」のデモの場面なんか、かれこれ5回以上は読みましたね!←単なるミーハー(笑)

しかも全然関係ないですけど、私の高校の先輩(2つ上)ですし(爆)。


◆そんな中島さんでも、全くいつも通りひろゆき氏との対談では、逆にペースを握られたりするのが面白いです。

中島さんが「自分がいた頃は、1日14時間とか働いていたのに、最近の米マイクロソフトは、午後5時には駐車場がガラガラで、グーグルはそうじゃない」とマイクロソフトを憂慮したのを受けて、対談はこう展開します。
ひろゆき氏 「午後5時に帰ることができて、ちゃんと利益を上げられる会社であれば、それはそれで価値があるんじゃないですかね。(中略)
肉体労働しないと利益が生まれない構造と、賢い人が仕組みを作って肉体労働しなくても利益が生まれる構造のどっちがいいかといえば、仕組みで利益を生む構造のほうがいいじゃないですか。そういう意味では僕は、マイクロソフトはそんなに悪い会社だと思わないですけどね」

中島氏 「そうか、そんな考え方があるか」

ひろゆき氏 「元マイクロソフトの人に向かって、マイクロソフトを擁護する僕もよくわからないんですけど(笑)、学園祭のノリみたいに皆で楽しいことを和気あいあいと長時間やるのが好きという人なら、グーグルは全然ありですよね。

・・・らしいと言えばらしい、ひろゆき氏の発言でした(笑)。


◆第1章は比較的書下ろし部分が多く、本書のテーマである「おもてなし」について、ブログ記事をネタに掘り下げてらっしゃいます。

この部分が、かつては「ゲイツ・クローン」であった中島さんの、現在のお考えがストレートに出ている感じ。

マーケティング関連の本では比較的よく取り上げられている「ユーザー・エクスペリエンス」ですが、バリバリの「技術者」兼、「経営者」である中島さんが考察されると、その重みも違います。

将来、何かすごい製品とか出しちゃいそうですし(笑)。

一方、私はまだ見た事もないんですが、アップルの「ユーザー・エクスペリエンス」の最高傑作(現時点で)らしい、「iPhone」を大絶賛されており、そこまで言われのるなら、私もいつかぜひ体験してみたい、と切に思いました。


◆そして、対談のトリを務めるのは梅田望夫氏

先日の梅田さんのご本とも関連する内容もあり、米国での起業に関して、興味のある方は、併せてお読みいただくと良いのではないでしょうか?

もちろん、小見出しにもなっている「ギーク」「スーツ」論についても、展開中(笑)!

梅田さんは、「ギーク」と「スーツ」の間に位置する中島さんに期待をかけてらっしゃるようですし、これからの若い世代は、中島さんのように「技術のことをバッチリ理解しながら経営の深いところまで話せる」ようになってもらいたいものです。←ちょっとヒトゴト(笑)


個人的には、大満足!!



【関連記事】

【スタバというブランド】『スターバックス5つの成功法則と「グリーンエプロンブック」の精神』ジョセフ・ミケーリ(2007年11月19日)

【必読】「ウェブ時代をゆく」梅田望夫(2007年11月12日)

【スタバ】「スターバックスに学べ」ジョン・ムーア(2007年09月04日)

「Google誕生」デビッド ヴァイス(2006年08月04日)

【ひろゆき節】「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」西村博之(ひろゆき)(2007年07月05日)


【編集後記】

◆昨日はホワイトデー。

私もヨメとムスメにプレゼントを買いに、銀座三越のお菓子売り場に行ったところ・・・。

ad745ad9.jpg

















何この男だらけのフロア(笑)。

(画像がボヤけているのはプライバシー保護のため)

丁度1ヶ月前のバレンタインデーにも、顧問先へのお土産を買いにたまたま同じフロアに行ったんですけど、その時はモロ女性だらけでした。

いやー、同じフロアでも、こうも違うもんなんだな、と(笑)。


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この記事へのコメント
               
おもしろそうな本ですね。
「おもてなし」って経営やマーケティングの軸になるべきことですものね。

>「技術のことをバッチリ理解しながら経営の深いところまで話せる」

ようになりたいです。そのためにももっとお勉強と実践を積まねば〜
Posted by ビルダーナース at 2008年03月15日 13:02
               
smoothさんこんにちは。
これは面白そうな本ですね。

携帯に便利な新書の類は通勤族には優しいです。早速ゲットしちゃいます!
Posted by 週サラhikaru at 2008年03月15日 16:03
               
smoothサンこんばんは♪
おもてなしって言葉は昔からあるのに、なぜ21世紀になってこんなにも注目されるのでしょうね
(^^)
デモ20年も前就職した企業への採用試験で「おもてなしする心が感じられ感動しました」という言葉を思わず出させられた事を久々に思い出せました。感謝デス。初心を忘れちゃいけマセンネ(涙)

別件でございますが、
影響力のあるsmoothサンにお願いがございます(; ;)
最近「存じ上げる」という敬語を耳にする事が大変増えました。
この敬語は実はお名前に対して遣う敬語なんデス。
田舎モンなので就職前に慌てて購入した本に掲載されており、夢中で都心で遣いまくりました。ですが周りの誰も遣ってナイ事に後に気づきまして(汗)
どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_ _)>
Posted by るり at 2008年03月15日 22:42
               
ユーザーエクスペリエンスがおもてなしかぁー
なるほど、いい訳ですね。
Posted by ITおやじ at 2008年03月16日 01:17
               
>ビルダーナースさん

本書の場合、ガチの技術者である中島さんが書かれているという点が、スゴイと思います。
こういう視点の技術者の方がトップにいる、というのは心強いカモ。

>hikaruさん

hikaruさんにもこの本はオススメ(笑)。
藤村正宏さんのご本にも通ずるところがあります。

>るりさん

そうそう、「初心忘れるべからず」ですね!
「存じ上げる」は私も名前に使うという意識はありましたが、違った使い方をしていたかもしれません。
以後気をつけますネ(汗)。

>ITおやじさん

意訳なんですけどニュアンス出てますよね(笑)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2008年03月16日 12:59
               
アップルのおもてなしとは
以後の急な売れ行きとは関係無しに
ユーザーや他の人に良いように
製品とそれ以外をそうすることです。

亜光速の未来の科学
http://kazuya32.web.fc2.com/

頭の善い役立つ ブログ
http://kiri-h-nikki.seesaa.net/

いつでも遊びに来てください。



Posted by 桐生和也 at 2009年07月29日 17:27