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2007年09月10日

【ベストセラーの作り方?】「騙される脳 ブームはこうして発生する」米山公啓


騙される脳 (扶桑社新書 18)
扶桑社
発売日:2007-08-30
おすすめ度:4.0


【本の概要】

◆今日お届けするのは、「脳オタク」「マーケティング好き」には格好の一冊。

著者の米山公啓さんは、年間10冊以上のペースで本を出しながら、現在も週2回診療を行っているというお医者さまです。

私も以前、図解本を買った記憶が(笑)。


◆今回のテーマは、「ブームを作る仕組み」

「ハンカチ王子」「'07の参院選の民主党」等々について、「脳科学の専門家」として分析されています。

他にも、「ブランド」「ゴッホ」といった興味深い対象も扱ってはいるのですが、「本好き」にとって見逃せないのが、第3章の「ベストセラーとクチコミの関係」

土井英司さん「出版マーケティングセミナー」に何度か参加しているワタクシとしては、ここだけ深く掘り下げてみようかと。

ベストセラーを出したい著者&出版社の方なら必見かも(笑)?


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【目次】

第1章 一大ブームが起きる理由
第2章 あの店に行列ができる理由
第3章 ベストセラーとクチコミの関係
第4章 脳はブランドに騙される
第5章 ゴッホもブランドだった!
第6章 病気マーケティング
第7章 健康法ブームにもウラがある
第8章 クチコミに騙されない方法



【ポイント】

◆上記の通り、今回は第3章に特化してお送りします。

■クチコミとは自慢マーケティングだった
◆この章に先立つ章で、米山先生は「話のネタとして盛り上がるもの」について言及されています。

まとめてしまうとこんな感じ(要約)。

・「みんなが知りたいと思える新しい話題」は刺激的である
・「新しい言葉」を口にするとき、人間の脳では快感を追体験する
・「何かを買う」という行為において重要なのは、実は理論ではなく直感だが、人は、買ってから理由付けをして自らを正当化したがり、「その決断をどのようにしたかを聞いてもらいたい」という欲望がある(話す側からすれば「自慢」)
・「苦労話」も「自慢」であり、何度も知り合いに話すことで、その人の脳内には快感が充満している

そして、このような「自慢話」がクチコミ・ウワサとして広がっていく流れを、米山先生は「自慢マーケティング」と呼ばれています。

言われてみれば、私も「ジェット・ストリーム」を、散々人に薦めてきて、それはこの製品の性能がすぐれているからだと思っていましたが、実は他の人に「こんなスゴイ製品がある」「自慢」していただけかもしれませんね(汗)。


◆ところで、米山先生曰く、「報酬系」の仕組みが、最近のベストセラーが生まれる仕組みにぴったりマッチする、と。

特にベストセラーにあてはめてみると、次の3つが重要だとか。

「予想外のことが起きる」
「新しいこと」
「予測していたことが実現される」

 本のベストセラーの場合、書店で意外な本が売れていることを知る。買って読むことで満足し、ある種の快感を得ます。さらに、新しい情報を得たその体験を人に言うことで自慢できますし、もう一度快感を得ることもできるということです。
 「読む」ということだけでなく「読んだ内容を人に伝える快感」こそ、まさにクチコミのパワーになっていくのです。

なるほど、内容が良いだけでなく、それを人に伝えることが快感になるような本がベストセラーになるわけですね。


■新書ブームについて
◆上記「報酬系」という観点から考えると、新書は「持ち運びやすい」という性質以上に、「『最後まで読みきれる』という達成感」が得られることが大きいそう。

また、人気の新書は

「有名人が書いた」「新しい情報」を「一気に読め」て、しかも「話のネタに使える」。

といいところだらけです。

内容的にも、従来は「難しい本を理解できることが教養」とされていたのが、新書の場合、著者の主張のエッセンスを抽出してわかりやすく構成したものが多いわけでして。

このように、ベストセラーは、「脳の報酬系のスイッチ」が入ることで、購買行動を促進しているのですね。


■ヒットの要因

◆この本は、米山さん曰く「職場やパーティで『最近面白い本読んだ?』という問いに使える本」。

まず、タイトル自体が意表をついてます(笑)。

そして、著者が全くの無名であると、「本」だけでなく「著者」まで勧めなければならないところ、養老孟司サンならその必要はありません(相手にもよるような気もしますが(汗))。

これはクチコミにとっては重要な要素らしいです。



◆この本の場合、「人に薦めやすいテーマ」であることが大きかったと、米山先生は分析されています。

この日本と私というテーマ設定はまったく新しいものではありません。しかし、これが今の「日本を憂い、論じたい」風潮にマッチしました。ある程度の年齢を重ねた人々は日本の行く末が不安でならないようです。(中略)
 私も親をはじめ何人かから『国家の品格』を薦められました。色々な場面でネタにできたわけです。クチコミが止まるハードルがなかったのです。

・・・スイマセン、私はこの本読んでいないので何とも(汗)。



◆クチコミに上がりやすい要素として、「泣いた」「笑った」というのも大きいそう。

そのような感情自体が、読んだ側の記憶の中に埋め込まれているので、「相手に伝えたい」というエネルギーも強いらしいです。

この本の場合、まず「泣ける」という要素が大きい、と。

さらに、400ページを超えながら、「一晩で読めてしまう」内容ゆえ、一気に読み終えた瞬間、脳内には「一冊の本を読み終えた」という満足感が発生します。

「自分で選んだ」本で、面白そうだと「予測して」読み、「読み終えた」のですから、脳内にドーパミン的な幸福感が充満していることでしょう。しかも、「涙」という感情がそこに加わっています。

なるほど、ヒットして当然の一冊だったわけですな。



◆この本が売れた理由として米山先生は、

 人間のあたらしもの好きという習性の中でも、「賢くなりたい」という期待は大きなものがあります。この習性を充足させることで満足感を得ます。

と言われています。

また、この本の特性についても「わかりやすい入門編」と指摘。

専門書の業界ほど、業界用語が多くなって、入門編を作るのが難しくなってしまうところ、本書は「会計」という専門業界に関する本でありながら、とても分かりやすかったのが勝因だとか。

なお、この本の著者である山田真哉さんは、あるインタビューで、「いかに読みやすくするかを考え、文字の大きさや文章の長さ、言葉遣い、つかみの部分にこだわり、起承転結をつけたストーリーにした」とおっしゃっていたそう。

それがベストセラーの秘訣だったんですね。


■その他のベストセラー
◆本書では他にも分析されていた本があるのですが、記事量の関係から、タイトルをご紹介するだけに留めておきます(汗)。





【感想】

◆最初に書いたように、「出版マーケティングセミナー」に参加するようなモノにとっては、なかなか興味深い分析でした。

惜しむらくは、私自身が全然これらの本を読んでいないこと(汗)。

しかも「さおだけ屋〜」に至っては、複数の方から「smoothサンは読まない方がいいよ」、と「マイナスのクチコミ」が寄せられたりしたという(汗)。

そう言われると、逆に読んでみたくなるんですが(笑)。←でも読んでない


◆さきほどアマゾンのリンクを貼る際に気が付いたのが、ご紹介したベストセラーのアマゾンレビューの評価がそれほど高くないということ。

こんな記事を書いているワタクシが、アマゾンレビュー見て言うのもアレですが、やはり、ベストセラーになるためには、日頃本を読まない人でも手にするようなモノでなければならないですし、そのような本というのは、本に対して思い入れなり主張がある方には、許せない部分があるのかな、と思ってみたり。

そう言えば、ダブルミリオンのこの本も、すこぶる低評価ですよね(汗)。


樋口先生ご自身は、もうちょっと間口の狭い、内容的に高度(?)な本を出されていらっしゃるのですが、日頃そのような本を読んでいる方にとっては、かなりショッキングだった模様(色々な意味で)。


◆私がこのブログで取り扱う本のジャンルから言ったら、100万部なんてまずありえないですし、10万部でも大ヒットです。

そもそもビジネス書って、1万部でもOKな世界ですから(確か)。

ですから、今回米山先生が取り上げられた本や、その分析も、かなりレアなケースと言えないこともないです。

本来なら、もうちょっと汎用性の広い、5万部〜10万部辺りを狙うマーケティングを考えたいところ。


◆知ったかぶって一つ言うなら、上記「国家の品格」のところで出た、「人に薦めやすいテーマか否か」は大事ではないでしょうか?

米山先生もこう言われています。

 例えば私が書いた「病院選び」の本、いくら「新しい」「ためになる」「一気に読める」内容で、読者が誰かに読んだことを自慢したくなっても、病院に用のない20代の男性などには話してもなんの興味も持ってくれません。
「病院選び」というテーマで誰かに本を紹介するとなると、話し相手が限定されてしまうのです。 

つまり、本は企画の時点で、どのテーマで書くかによって、「マックスのパイの大きさがほぼ決まっている」んですよね。

本を書かれる方は、この辺も意識して頂きたいところです。

もっとも、ビジネス書の場合、本はフロントエンドであって、普通メインのビジネスが他にあるので、「本はそれほど売れなくてもいい」、というケースもあります(汗)。←身も蓋もない


◆ちなみに、本書の「脳科学的部分」以外の「マーケティング的考察部分」については、ある程度マーケティングの知識がある方から見たら「そうかな?」と思うところがないとも言えません(汗)。

それでも、私としては、「新たな視点」を得られたのは事実。

今まで、「クオリティが高いからクチコミになる」、と思ってましたが、そうではなくて、人に伝えることが「快感」になるようなモノが、クチコミとして広まるわけなんですね。

私も、「面白くてタメになるブログがあるんだよ〜」クチコミすることが「快感」になるようなブログ(どんなだ(笑))を目指して、今後も頑張りたいと思います。


◆と言うわけで、今回はかなり偏ったご紹介の仕方をしてしまいましたが(笑)、本書は目次からもわかるように、「ブランド」「ゴッホ」「健康法」といった事項についても、米山先生の自論が展開されています。

「流行」「クチコミ」といった現象に興味のある方なら、一度手にとってみることをオススメ!

騙される脳 (扶桑社新書 18)
扶桑社
発売日:2007-08-30
おすすめ度:4.0


【関連図書】

◆ベストセラーについては、この本でも鋭く分析されています。

(関連記事は下記)

こちらではネットワーク的視点による、ベストセラー発生のお話が中心。


◆また、ベストセラー作りのあの手この手ならこの本が(笑)。

(関連記事は下記)


【トラックバックさせて頂いたブログ(追記)】

「書評 - 騙される脳」:404 Blog Not Foundさん


【関連記事】

【ティッピング・ポイント】「急に売れ始めるにはワケがある」マルコム・グラッドウェル(2007年07月18日)

「ヒット商品を最初に買う人たち」森 行生(2007年04月13日)

「クチコミの技術」コグレマサト,いしたにまさき(2007年03月28日)

「ブームはどう始まりどう終わるのか」中川右介(2007年01月12日)

「この本は一〇〇万部売れる」井狩春男(著)(2006年07月25日)

「ベストセラーの作り方」ベストセラー研究会(編)(2006年05月17日)


【編集後記】

◆昨夜は夕食の際に、ムスコをテーブルに乗せて食事をしました。←お行儀悪すぎ(汗)

いえ、ムスコが、親(や姉)が食事をしているところを見るのがすこぶる好きなようなので(汗)。

そう言えば、ムスメも同じくらいの年の頃は、私たち夫婦が食事しているところを、歩行器の中から、毎日ガン見してたのでした。

そのせいもあって(?)、ムスメは他のお母さん方からうらやましがられる位、何でも良く食べる子供になったという話も。

これって、ひょっとしたら、一種の「エリート教育」(食べることの(笑))なのかもしれませんね(笑)。


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今回のフォトリーディングのターゲットは 米山 公啓さんの『騙される脳』です。 副題は「ブームはこうして発生する」です。 通販で「ビリーズ・ブート・キャンプ」を買った 話題のラーメン屋の大行列に並んだ 人気のアトラクションに3時間待ちで乗った 「がばいばあち....
こうしてあなたは騙される●騙される脳~ブームはこうして発生する~【フォトリーディング@Luckyになる読書道】at 2007年09月24日 14:50
                               
この記事へのコメント
               
年間10冊とはすごいですねえ。

「国家の品格」は読んでいませんが「男の品格」「女性の品格」は読みました。どちらも・・・・ナイショ。

息子さんのエリート教育も着々と進むのでしょうね。1人目は親を見て育ちますけど、2人目はほんと兄や姉がお手本のようです。きっとお食事とダンスの?好きなお子さんになられそう。
Posted by meg at 2007年09月10日 07:26
               
smoothさん、こんにちは!

わたしも、ベストセラーとは、縁遠いです。
なぜか、売れてると聞くと、買う気がなくなります。
売れない、良本に、心惹かれます。
Posted by ニタ@「教えて会計」 at 2007年09月10日 09:17
               
こんにちは。
良いものは薦めたくなるというのはありますね。
薦めたくなる要素をどう考えるか、というのは、マーケティング的には、重要かも知れませんね。
Posted by 独立起業家:こばやし at 2007年09月10日 09:48
               
年間10冊ってそれだけでもすごいのに、
ほかのこともしっかりされてるってほんとすごいことですよね。

応援くりっく!ぽちっ
Posted by 笑顔整体 健康の知恵袋:院長 at 2007年09月10日 11:20
               
smoothさんこんにちは。これはなかなか面白そうな本じゃないですか!いっときましょうか!
Posted by 週末起業サラリーマン at 2007年09月10日 12:28
               
話題にのぼるような内容で書くことと、どんな風に話題になるかを予測しておき、それ狙いの内容で書くことが大事ってことなんですね。
そういう視点もないとせっかく書いても読んでもらえないかもしれないですものねぇ。
今後のためにこの本もチェックしておこうっと。

Posted by ビルダーナース at 2007年09月10日 16:07
               
>「読んだ内容を人に伝える快感」こそ、まさにクチコミのパワー

ここなんでしょうか。小技を使わない正当派のクチコミ・マーケティングですね。
Posted by マチスケ at 2007年09月10日 20:06
               
>all

スイマセン、ムスメに邪魔されてるので、職場に行ってからレスします(汗)!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年09月11日 07:33
               
>megさん

「ナイショ」ですかーーー(汗)!
了解です。
食べる方のエリートは本人はどう思ってるのか微妙ですが、ママ友だちさんには、ムスメの食いっぷりはうらやましがられますね(笑)。

>ニタさん

まぁそう言わず、「影響力の武器」第2版、買って下さい(笑)。
出張お気をつけて。

>こばやしさん

この考えで行くと「人には教えたくないもの」は流行しないことになりますよね(笑)。
ホントかな???

>院長サマ

年間10冊はちょっと多すぎると思います(汗)。
私はあまり多作な著者さんの本はご紹介しないんですけど、この本は面白かったですね。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年09月11日 11:06
               
>hikaruさん

遅くなりましたが、メッセした通りということで(笑)。

>ビルダーナースさん

「先を読む」という点では、土井英司さんのセミナーで面白いお話を聞けました。
また機会があれば・・・。

>マチスケさん

「脳」の専門家からすると、クチコミも、そういう「快楽」が動機になっているようですね。
勉強になりました。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年09月11日 11:15